わたし・久保田雅人(くぼた・まさと)のまわりで起きた「あんなことこんなこと」・・・。
全国でのイベント裏話や名物・名産、身の回りでのささやかな「出来事」をお話していくつもりです。
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2016_05_01


 今年も春が来て、あちこちに新人たちが町中に見られる季節ですね

 朝の満員電車にでもわかるのですが新入社員の人は、満員電車の乗り方がまだわかっていないんだなあ、これが。乗ってきたらどうやって中に詰めていくのか、どうやんて自分の体をねじ込んで乗り込めばいいのか、なんてことがまだわかっていないんだ。乗る時も降りる時もどうやって体を滑らせて人混みをくぐる抜けて会社に行けばいいのかがわかっていないんですよ。私がいつも乗っているのは、首都圏でも一位二位を争うほどの乗車率を誇るめちゃくちゃ混む電車ですので、余計に「あ、こいつ新入社員だな。」ってすぐにわかります。まあ、そんな人たちも一か月もすればベテランみたいな顔をして乗り込めるようになるんですから不思議というか、慣れとは恐ろしいものです。

 さて、我が家にも新入社員が出来ました。と言っても、私が新しく社員を雇ったわけではありませんよ。息子が高校を卒業して就職をしました。毎朝、きちんと決まった時間に家を出て行く姿は父親としてうれしいもんです。なんとなく頼もしくなった息子の姿に嬉しさを感じる日々です。言うなれば中小企業ですが、それでも息子は自分で選び、今は毎日勤めに出ております。以前にも書きましたが、私には娘が二人、息子が一人と三人の子供がおります。娘も息子も私とは違う職業に就いてくれました。父親としては子供が小さい時から思っていたことが一つありました。「どうか、父親と同じ道を目指さないでほしい」ということです(笑)。「え?そうなの?」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、本当です。私自身、今自分がやっていること、「わくわくさん」としてやっていることに自負がありますし、やっていて本当にうれしさを感じております。しかし、「役者」と言ういわゆる業界人というくくりになるのは間違いありません。見た目は華やかですが、これほど努力が報われない世界も珍しいです。私はとっても小さな劇団の研究生からスタートして、演劇、役者の修業を始めたのです。それまで、演劇経験は全くありませんでしたので、それこそ「いろはのい」から勉強し始めたわけです。それはそれは大変な日々でした。始めた頃はまだ大学4年生で、教職も完全に諦めてもいない時期でした。何と、昼間は教育実習で母校の高校で教壇に立ち、夕方からは昼間教えていたような若い人たちと一緒に劇団でダンスや芝居の稽古をしておりました。実に教育者という職業をナメタまねをしたもんだと後悔しております。こんなことしていて教員採用試験に受かるわけもなく、教育者の道を完全に諦めて、役者の道に専念することになったのです。

 それからは、劇団の稽古場とバイト先を往復する日々が続きました。自分の勉強という意味もあっていろんな芝居を観たり、他の劇団の芝居に出たり、仕事でオペラのエキストラで様々な舞台に出させていただきました。そんな中で数多くの方に出会いました。私より年上で何年も役者をしている方をたくさんお会いしました。皆さん、私よりたくさんたくさん練習し、修行を積んでいらっしゃる方ばかりです。「うあ〜、うまいなあ〜」と思った方が何人も何人もいらっしゃいました。でも、皆さん、役者だけでは食えなくてバイトでやっと食べていけている方がなんと多い事か。オペラの舞台では実に堂々とした男の役を見事に演じ、素晴らしいバリトンの声で魅了させる方が新宿二丁目で「その道のお店」をやっている方もいましたよ。「お店もやってないと食えないのよう」という姿はまさに「二丁目のお店のママ」でした。舞台では実に味の有る面白い芝居をしていて、バイトではパチンコ屋に勤めていて、なんとと主任にまでなってしまい、そのまま役者をやめて言った方もいました。

 そんな方の話をしだしたら、書き出したら数知れずです。いくら練習してどんなに上手くなっても必ず報われるとは限らないというのはどんな職業でも言えることですが、役者の世界は突出して報われない気がします。これまで、「役者を目指す」若い人をそれこそ1000人ぐらい関わったり見たりしましたが、今現在、テレビドラマなどで顔をみれる人は2,3人です。5人はいません。私の場合、本当に「運が良かった」というより他にありません。そんな職業を自分の子供に進めることは私にはできませんでした。ですので、子供が小さいころから仕事から帰ると子供にも聞こえるように「あ〜やだやだ、もう疲れた。」と言ってました。その甲斐もあってか、子供が私と同じ道を選択しませんでした(笑)。

 父親としては、子供がどんな形であれ社会の生産にかかわるような仕事に専念できる人間になって欲しかったのです。そして、その生活の中で自分の腕で勝負できる人間になって欲しいと考えているのです。もちろん、人間はある程度の運不運がその人の人生を左右されることもあります。でも、そんな時に自分の持っている腕と器量で難局を乗り切れる人間になって欲しいと思うのが親というものなんでしょうねえ。そして、息子のような新人たちに言いたいことです。11打数0安打5三振、これは、のちの三冠王にして名監督となった野村克也さんのプロ1年目の成績です。自分を信じ鍛え上げる努力の大切さを明確に表した数字です。

  これを息子をはじめ多くの新入社員諸君に送ります。









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