2011_03_01
時々聞かれる質問にこんなことがあります。
「昔の子供と今の子供たちとは、どこが違うと思いますか?」
今までに本当に多くの幼稚園さんにお伺いをし、本当に多くの子供たちと接してきました。
20年以上にわたって全国の幼稚園さん、親子劇場さん等にお伺いしたのは、事実ですし、本当に多くの方々、子供たちと話をしてきました。
そこで、長年にわたって気になっていることに「言葉使い」があります。数年前に「ら抜き言葉」が、問題になったことがありました。
『食べられない』が、『食べれない』というような言葉使いです。でも、これらは、いつの間にか問題視されることもなくなり、ごく普通に当たり前に使われるようになりました。
時代によって言葉は様々に変化をしていくのであることはわかりますが、今の私たちが直面しているような日本語の変化は、時代の必然性とは違う異質な変化のように思います。ただ日本人が日本語を使うことに横着になっていくことによって起きた変化であるような気がします。
どういうことかと言いますと、『最後まで言わなくなった』ような気がします。この前にお伺いした幼稚園さんで耳にしたことです。
『○○ちゃん、そんな時は、怒っていいんだよ、怒りな。』という先生の声が私の耳に飛び込んできました。ドキッとしました。『怒りな。』じゃあないでしょう、『怒りなさい。』ではないでしょうか。
その先生にとってはごく普通の日本語なんでしょうが、日本語を覚え始めている子供たちには、もっと考えて日本語を使ってほしいです。これは、この先生に限ったことではなく、大人全員に言えることではないでしょうか。子供たちの前では、もっと気を使った言葉使いをしていかなければならないと考えます。
私の実体験ですが、幼稚園児に『おい、わくわく』と呼び捨てにされたことは、一度や二度ではありません。また、ここ数年で回数が増えています。
これは、親御さんたちが子供とテレビを見ながら、ごく普通に当たり前にテレビに出てくるタレントさん、俳優さんを呼び捨てにしているからです。それを聞いて子供たちは、そういう人たち(テレビに出ている人たち)は、呼び捨てにしてもいい、もしくは、呼び捨てが当たり前と思って、何の抵抗もなく私たちを呼び捨てにできるのでしょう。
『テレビに出ているんだから仕方ないでしょう。』と思った方に言いたいです。
あなたは、見ず知らずの人に、見ず知らずの子供に呼び捨てにされて平静でいられますか。そいつを追いかけて、捕まえて、怒鳴り散らすまではいかないまでも、心の中が冷静さを失いかけないでいられる自信がありますか。子供が見づ知らづの大人を呼び捨てにしても怒らない大人に、親にならないでください。そのためにも家族の団らんのテレビ鑑賞とはいえ、タレントを俳優を呼び捨てにしないでください。
話が少し戻りますが、『最後まで言わなくなった。』ということに関してです。
ある小学校で耳にした先生と子供の会話です。その子供は、教科書を開いて、ある部分を指でさして先生に「先生、ここ。・・・」と、それしか言いません。このスチュエーションから察するに先生にわからないところを質問しているとは思うのですが、「ここがわからない。」でもなければ、「ここはどうしたらいいの。」でもなく、ただ指をさして「ここ。」としか言わないのです。これには先生も困ったようでした。
例えば、長年連れ添ったご夫婦が、「おい、あれ。」とご主人が言っただけで、「ああ、あれですね。」と答えてそのものを持ってくる奥さん(わかりやすい例が、波平さんとフネさん)なら全てを言わずとも分かり合うこともできましょうが、先生と児童では無理というものでしょう。これもまた、先ほどと同じで親御さんが子供との会話で最後まできちんと話をする習慣を身に付けさせていないからではないでしょうか。
自分の意思をはっきりと伝える努力とその習慣は、学校教育に100%頼るものではありません。
言葉は、自分の意思を相手に伝える大切な手段です。
ですから言葉は大切に使いなさい、大切に伝った者にだけがわかる言葉の持つ素晴らしさがわかるということを子供たちに伝えたいのです。
言葉に出さなくても伝え合うこともできるという方もいますが、それは、言葉を使いきった人が言えることです。だから、子供には絶対に無理なことなのです。
大人の言葉が変わらぬ限り私たちを呼び捨てにする子供が増えるばかりです。